櫻井勇介准教授と大学院生の共著論文が『The Routledge international handbook of learning and instruction in university education』に掲載されました

櫻井勇介准教授と大学院生の程文娟さん、猿田静木さんの共著論文が『The Routledge international handbook of learning and instruction in university education』に掲載されましたのでご紹介いたします。

書誌情報

タイトル:「Proactive strategies for doctoral students to enhance their well-being: A systematic literature review」
執筆者:Sakurai, Y., Cheng, W., Saruta, S., Zheng, R., Mason, S., Singh, J. N., Li, H., Dai, M., Qin, H., & Elliot, D. L.
書籍名:『The Routledge international handbook of learning and instruction in university education』
URL:https://doi.org/10.4324/9781003540496-33

概要

本研究は、本学の櫻井勇介准教授を中心に、本学博士課程(後期・高等教育学コース)に在学中の程文娟さん、猿田静木さん、ならびに本学博士課程(後期・日本語教育学プログラム)を修了したRuonan Zheng氏を含む国際的な研究チームによって実施されました。研究チームには、Shannon Mason氏(長崎大学)、Jasvir Nachatar Singh氏(La Trobe University、オーストラリア)、Huan Li氏(Xi’an Jiaotong-Liverpool University、中国)、Monique Dai氏およびHanyu Qin氏(The University of Hong Kong、香港)、Dely Lazarte Elliot氏(University of Glasgow、英国)が参加しています。本研究では、博士課程学生のウェルビーイングに関する実証研究を体系的にレビューしました。

博士課程での学びには、研究の不確実性や孤立、高い期待、長期にわたる研究活動など、心身の健康に影響し得る要因が伴います。本稿では、2014年から2024年に公表された59本の実証研究を対象とするシステマティック・レビューに基づき、博士課程学生が自らのウェルビーイングを主体的に維持・向上させるための「4つのR」を提示しています。

第一は、Reflect(振り返る)です。自身の動機、感情、期待、研究の進捗や困難を振り返り、「進歩」を研究上の成果だけでなく、心の健康も含めて捉え直します。日記を書くことや、現実的かつ前向きな自己理解を育むことも、この実践を支える方法となり得ます。

第二は、Routinise(生活と研究のリズムを整える)です。無理のない作業習慣や計画、休息、睡眠、運動、そして研究から心理的に距離を取る時間を確保することは、長期にわたる研究生活を支えます。重要なのは、常に働き続けることではなく、心身を回復させながら研究を継続できる、自分に合った持続可能なリズムを築くことです。

第三は、Reveal(状況や悩みを伝える)です。不安、行き詰まり、進捗への懸念、指導上の課題などを、指導教員、研究仲間、家族、相談員等に伝えることで、必要な支援につながる可能性が高まります。困難を言葉にすることは、「自分だけの問題ではない」と気づく契機となり、孤立感を和らげることにもつながります。

第四は、Relate(人とつながる)です。研究仲間、執筆グループ、学内外の研究コミュニティ、友人や家族とのつながりは、所属感や相互支援を生み出します。博士課程は個人で研究を進める側面が大きい一方で、他者との関係は、研究生活を支える重要な資源となります。

ただし、この「4つのR」は、学生に「自分自身で何とかすること」を求めるための枠組みではありません。本レビューは、学生自身の主体的な行動とともに、相談しやすい指導関係、利用しやすい支援制度、休息や助けを求める行動を尊重する大学文化といった組織的支援が不可欠であることも示しています。本稿は、博士課程学生、指導教員、大学関係者に向けて、博士課程におけるウェルビーイングを個人と組織がともに支えるための実践的な視点を提示するものです。