Best Poster Award受賞について

北京で開催された「HERA 2026 Conference」において、弊センター所属の大学院生(博士課程後期)であり県立広島大学特命助教の康凱翔さん、ならびに卒業生の樊怡舟さん(広島大学特任学術研究員)、中尾走さん(愛媛大学特定講師)がポスター発表を行い、Best Poster Awardを受賞しましたので、ここにご紹介いたします。
同賞の受賞は、昨年香港で開催されたHERA 2025 Conferenceでの受賞に続き2度目となります。

受賞名:Best Poster Award
発表タイトル:Causal Discovery for Ordinal and Mixed Student Satisfaction Survey Data: Reliability Boundaries for Data-Driven University Decision-Making
著者:康凱翔(県立広島大学特命助教・広島大学博士課程後期)、樊怡舟(広島大学特任学術研究員)、中尾走(愛媛大学特定講師)
学会HERA 2026 Conference
日程:2026年6月13–14日

概要
本研究は、大学の意思決定において広く用いられている学生満足度調査や学生エンゲージメント調査を対象に、順序尺度データおよび混合データに対する因果探索の信頼性を検討したものです。

大学IRや教育改善の現場では、「授業への満足度が低い学生に対して、どのような学修支援を行えば成績不振や退学リスクを抑えられるのか」といった問いがしばしば扱われます。これらは単なる相関関係ではなく、因果構造に関わる問いです。しかし、リッカート尺度のような順序尺度の回答を通常の数値変数として扱う場合、天井効果、床効果、カテゴリの偏り、回答スタイルの影響などにより、測定上の歪みが生じ、因果構造の推定結果に大きな影響を及ぼす可能性があります。

本研究では、シミュレーションを通じて、測定の歪みが因果探索アルゴリズムの性能に与える影響を検証しました。その結果、回答分布が均衡しており測定品質が高い場合には、複数の手法が比較的近い性能を示す一方で、強い天井効果や回答カテゴリの偏りが存在する場合には、推定可能な因果構造が大きく損なわれることが示されました。また、サンプルサイズを増やすことは推定の安定化には寄与するものの、測定の歪みによって失われた情報そのものを回復することは困難であることも明らかになりました。

本研究の重要な示唆は、因果探索においては、アルゴリズムの高度化だけでなく、調査項目の設計や回答分布の診断を含む測定品質の確認が不可欠であるという点にあります。特に、大学のデータ駆動型意思決定に因果探索を応用する際には、分析手法を選択する前に、データが因果構造の推定に耐えうる測定品質を備えているかを慎重に検討する必要があります。

本発表は、大学IR、学生調査分析、教育改善におけるデータ活用の信頼性を高めるための実践的かつ方法論的な貢献として評価されました。

      写真中央が康凱翔さん