「9月入学」に対するTwitter上の反応は?(2)
RIHE高等教育研究資源ナショナルセンターレポートシリーズ
2020.5.28掲載
報告:高等教育研究資源ナショナルセンター・研究分析チーム/
(分析主担当:中尾 走(広島大学大学院博士課程後期在籍、
日本学術振興会特別研究員(DC2)))
■「#9月入学賛成」「#9月入学反対」の中身
「#9月入学賛成」「#9月入学反対」の中身の議論を探るためには,ツイート内に頻繁に用いられている単語を見ていくことが一つの方法である。しかし,それでは熟語などが落ちていく点と単語だけでは,意味を捉えることが難しいため,共起(今回は,文章内で隣り合っている単語同士のみ)している単語同士を名詞と形容詞に絞って抽出した。
例えば,「ツイッター上で9月入学の議論が盛り上がっている。その反応はどうだったのか?」だと,以下の表のようになる。品詞を名詞・形容詞に絞っているため,「ツイッター上で」という部分の「上―で」は共起として抽出されていない。
頻度が1のものからすべてを図として示すと,文字が全く見えないため,それぞれ150回以上の頻度のものだけを抽出して以下の図に示した。
まず「#9月入学賛成」のツイート内で共起している単語を読み取っていこう。左下の「賛成」という単語と共起している単語を読み取っていくと、「実現―可能―性」や「学び—機会―全員」,「年齢―区分」,「犠牲」などいった単語との繋がりがあることがわかる。また,「学びー機会」「子どもー人権」などは9月入学に賛成する根拠となる内容の言葉であろう。
次に「#9月入学反対」のツイート内で共起する単語を検討してみよう。中心付近の「反対」という単語と共起している単語を読み取っていくと,「保護―者―被害」や「犠牲」「学年―分断」など反対の根拠となりそうな単語が見られる。また「強制―留年―選択―制」など改善案と見受けられる一連の単語も挙げられている。右下にある「報道―偏向」は報道に対する意見と捉えられる。ただし,反対とは繋がっていないので,反対と隣り合って文章中で用いられているわけではない。
また、同時期にツイート数が伸びた「検察庁―法―改正―案」と「反対」が繋がっている点は興味深い。以上は,上記の図から解釈可能な部分のみを抽出した結果である。しかし,図を見て分かるとおり共起関係だけでは議論の中身についての解釈はとても難しい。
■どのようなツイートが共感され,拡散されたのか
以下は,「#9月入学賛成」と「#9月入学反対」とハッシュタグが付いた「つぶやき」の中で,他人から「いいね」と評価されたもの、そして、リツイート数が多いもののトップ5を並べたものである。
まず,「いいね」と評価の付いた「つぶやき」を検討してみよう。「#9月入学賛成」で「いいね」の数が上位のものは,実際に9月入学の影響を受ける高校生(と思われる人)のツイート等自分が当事者であれば,というツイートがある。「#9月入学反対」では,どのようなデメリット(課題)があるかという視点からのツイートに「いいね」と評価された数が多くなっている。
次に,リツイートされた「つぶやき」の数について見てみると、「#9 月入学賛成」と「#9 月入学反対」のどちらも当事者の気持ちを書いたツイートが拡散(リツイート)されていることがわかる。
(次回,「#9月入学賛成」と「#9月入学反対」の議論の違いを探るに続く)
※分析で使用したデータを使用したい方は,以下の連絡先までご連絡ください。
広島大学大学院 中尾走(ran-nakao(at)hiroshima-u.ac.jp)