第17回公開研究会『観察データを用いた統計的因果推論のための3ステップ: 回帰分析を例に』開催報告

記事概要:第17回公開研究会『観察データを用いた統計的因果推論のための3ステップ: 回帰分析を例に』開催報告

開催日時:2019年12月14日(土)

開催場所:広島大学東京オフィス2階ラウンジ (2階情報発信センター)

報告者:中尾 走(広島大学大学院博士課程後期)

2019年12月14日(土)に,広島大学東京オフィスにてハーバード大学の芝孝一郎先生をお招きし,第17回公開研究会を開催しました。芝先生には「観察データを用いた統計的因果推論のための3ステップ:回帰分析を例に」というタイトルでご講演を頂きました。因果推論といえば,現在EBPMの流れもあり,ホットなトピックになりつつあります。加えて,この流れで取り上げられる因果推論の手法はかなり限定されており(RCT,傾向スコア分析,DID分析,操作変数法など),これらの手法でしか因果関係を特定できないかのような錯覚を与えつつあります。しかし,実際にこれらの手法は序列づけられるものではないという点や,私たちが統計学の講義でまず初めに学んできた回帰分析で,因果推論を行うということも仮定によっては可能であるということをお話し頂きました。回帰分析での解釈の仕方や,効果の修飾と交互作用の微妙な違いなど,今まで用いてきた方法を批判的に検討する良い機会であったかと思います。

また,因果効果を特定する際に①因果効果の定義,②相関から因果関係を導くことが可能な仮定,③因果効果の推定というCausal Roadmapに即した3ステップで説明してくださいました。傾向スコア分析,DID分析,操作変数法などの手法を使う論文が増加してきましたが,それ以前の仮定の話が蔑ろにされてきたのではないでしょうか。このような手法に対して,細かな仮定や対象としている母集団の違いを提示してくださったのは,大変分かりやすいまとめでした。この話を踏まえます,EBPMで推進されている手法には序列がついておりますが,それぞれの手法が対象としている母集団が異なるということは,やんわりと認識していましたが,明確に示してくださった点は今後の分析に活かしていきたいと感じました。

芝先生には,短期間の日本滞在中にお忙しい中,無理をお願いして御登壇いただきました。疫学分野において世界トップレベルの方法論のお話を頂戴し,まだまだ勉強すべきことが沢山あると実感させていただきました。 ありがとうございました。