第3回公開研究会『責任ある研究をどう進めるか:研究倫理の現状と課題 第2回』開催報告

記事概要:第3回公開研究会『責任ある研究をどう進めるか:研究倫理の現状と課題 第2回』開催報告

開催日時:2019年6月15日(土)

開催場所:東北大学東京分室

報告者:松宮 慎治(D2、神戸学院大学職員)

 6/15(土)東北大学東京分室において,第3回公開研究会『責任ある研究をどう進めるか:研究倫理の現状と課題 第2回』が開催された。小林センター長による趣旨説明ののち,2つの話題提供をいただいた。

 須田桃子記者(毎日新聞)による第1報告では,自身が取材されたSTAP細胞事件の研究不正の全体像と不正解明のプロセスが詳説された。もっとも重要であったはずのES細胞の混入が,誰によっていつ行われたかが明らかにならなかったがゆえに,不正として認定されなかったことや,検証実験等に億単位のコストがかかったこと等が問題点と指摘された。一方,問題は多かったものの,研究者コミュニティによる自浄作用が部分的に機能したことは評価された。佐藤岩夫教授(東京大学)による第2報告では,日本学術会議による「軍事的安全保障研究に関する声明」(2017年3月)と「学問の自由」の関係が紹介された。具体的には,日本における「学問の自由」とドイツの大学における平和研究条項の議論を比較し,軍事研究の禁止が一義的に明示しうるかを検討した。日本では憲法9条を根拠として,軍事研究の一義的な禁止を正当化することもありえたが,科学技術の健全な発展に重きを置くことを結論することとなった。

 2つの報告を受けて,フロアでは,①STAP細胞を経て理研のコンプライアンスは変われたのか(実のところ,変わったかどうかはわからないのではないか)②濫立するルールや指針,倫理憲章といったものの構造化の必要性③スローガンが異なる文脈で利用されることの危険性(その中で,「学問の自由」の説得力をどう担保するか)④プレゼンスを得るための誇大広告的な広報といったコミュニケーションの評価⑤科学リテラシーの社会的養成⑥査読体制の改善による不正防止は可能か⑥理研のマネジメントや広報の問題点について批判的検討はなされたか,といった議論が展開された。

 研究倫理は本センターが今年度から本格的に取り組んでいる課題であり,今後も継続的に研究会を開催する予定である。