Ⅰ 拠点形成の必要性(高等教育を取り巻く環境)
グローバル化、知識社会化、市場化など国際的な社会変化の進行に伴い、産業社会から知識社会への転換、それに伴う近代大学から未来大学への転換が生じて います。 特に知識社会への対応した適切な大学・高等教育システム構築が学問の発展、ひいては国家社会の発展を左右する度合いは一段と高まっています。そのような状 況の中で、世界的に欠かせない古くて新しい問題であり、すでに各国において拠点形成の動きが顕在化しています。そして、高等教育研究の世界的な指導性を発 揮し、知識社会に対応した「21世紀型高等教育システム構築」が各国とも必要とされています。日本も例外ではなく、それを実際に実現するには、組織・研究 両面での中長期の国際戦略が不可欠であることが分かります。
Ⅱ 拠点形成の目的・特色
拠点形成の重要な目的の第1は、高等教育研究における世界水準の学問的生産性(研究生産性・教育生産性など)を上げ、国際学界への貢献を通じて国際社会と日本社会の発展に寄与することであります。目的の第2は、高等教育研究の国際競争力を持つ機関の構築によって世界の学術交流の要衝としての「学問中心地」を形成することであります。
そして今回のプログラムでは、拠点形成の現実に向けては、「高等教育研究の推進」、「国際的学術研究会の定期的開催」、「学術情報の発信及びデータベース構築」、という相互に有機的関連性を持つ3つの主要な目標に加えて、「将来の研究者の人材教育」があります。
Ⅲ 拠点形成の学術的・社会的意義と人材育成
(1)高等教育研究の推進
国際学界ひいては日本や国際社会へと貢献することを目的として、世界水準の研究生産性を上げるべく種々の研究活動を行います。特に、本プログラムにおいては、「21世紀の高等教育システム・機関・組織の戦略的構築に関する総合的研究」を中軸として考えています。
(2)国際的学術研究会の定期的開催
世界の拠点の優れた人材や情報・知識との不断の接触によって、知識・情報・人物を媒介とした計画的な学術交流システムを確立。高等教育研究開発センター(以下センター)の30年間の実績を基礎にし、定期的・組織的・集中的な学術研究会の開催によって世界水準への飛躍を図りたいと考えています。
(3)学術情報の発信及びデータベース構築
研究活動、学術研究会などの成果は各種出版物によって、世界へ学術情報発信する体制を整備しています。従来の大学論集、高等教育研究叢書。各種英文出版などに加え、当センター刊行物の英訳出版を逐行うと同時に、収集した世界の高等教育研究に関する豊富な文献・資料類をデータベース化し、世界的拠点にふさわしい情報・資料・知識の発信を行うデータバンクを形成していきます。
(4)人材育成
次代を担う国際的な人材を輩出するために、高等教育の最先端の研究に従事する何名かの優秀なポスト・ドクターを「COE研究員」として公募し、プロジェクト研究の推進を通じて人材の育成を積極的に図ります。
また、当センターは高等教育研究者養成について国立大学で最初に認可された実績をベースに、大学院での教育や当センターの活動を通じて、研究者のみならず、事務職員などの実務家やマスコミ界などの専門家の養成も図って行きます。
Ⅳ 研究計画と期待される研究成果
本プログラムの中軸研究プロジェクトである「21世紀の高等教育システム・機関・組織の戦略的構築に関する総合的研究」は、(1)大学教育システムにおけるFD・SD(教員職員資質開発)の制度化と質的保証に関する研究、(2)大学研究・教育システムの制度化と資質保証に関する研究、(3)大学統合ならびに組織的編成と機能の資質保証に関する研究から構成される3つの柱に即した三位一体の、国際的・実証的・総合的研究を展開していきます。
中軸研究プロジェクトの成果は、日本の新たな21世紀型高等教育システム・機関・組織の構築と資質保証に関する提言を、体系的な実証研究を基礎に行うものであり、社会構造変化に対応して高等教育が直面している研究・実践・政策の連関性に明確な診断と処方箋を提供していきたいと考えています。センターの研究集団が長年醸成してきた研究の規範・組織・風土などの伝統をバネにした新たな研究課題への創造的挑戦は、拠点としての研究集団に必要な潜在的・顕在的活力を十分備えており、期待にこたえられる研究成果を上げていきたいと考えています。