お祝いコメント/吉田 文

早稲田大学 教育・総合科学学術院 教授
吉田 文

 

創立50周年のお祝い

吉田 文 (早稲田大学 教育・総合科学学術院 教授)

 

 

 私が、初めて広島大学のセンターを訪問したのは、大学教育研究センターという名であった頃、東千田町のキャンパスにあった頃である。

当時の放送教育開発センターにようやく就職できた私は、奇しくも同じ頃に広島大学のセンターから赴任して来られた喜多村和之先生に

連れられて、恐る恐る足を踏み入れた。論文や書籍でお名前を存じ上げていた先生方のご尊顔を拝し、文章から想像していたイメージと

交差したりしなかったり。うず高く積まれた資料を見上げつつ、こうやってあれだけの研究が生みだされてくるのだと妙に納得したり、

だった。

 それから間もなくしてセンターは東広島に移転し、キャンパスの中心部に居を構え、格段にきれいで広いスペースとなった。場所やスペース

は、大学内での位置づけを象徴するものであり、学内で一目置かれている組織であることを認識した。それからしばらくして、大学教育研究

センターは、高等教育研究開発センターへと改称した。大学から高等教育へと対象分野を大きくし、研究に加えて開発にも従事するという

守備範囲の拡張は、日本を代表する高等教育関連のセンターの雄であることを内外に示した。

 それと前後して、日本の大学は高等教育関係のセンターを設置するようになった。広島大学のセンターだけがこうしたセンターではない時代

になったが、広島大学高等教育研究開発センターの地位は揺るがない。いや、多くの大学にそうしたセンターが設置されたことで、広島大学の

センターの重要性を明確に示すことになったというべきかもしれない。

 成長物語の半世紀。創立50周年を心からお祝いしたい。

 私自身も、初訪問依頼、成長の過程にいろいろな形で関わらせていただくことができた。その意義は、語り尽くすことができないほど

大きく、ただ感謝のみである。

 ところで、初めてセンターを訪問した時から今日までの月日を、改めて指折ってみた。今更のようにその長さに驚いた。センターの半世紀の

後半の半分強にならんとしているのである。そんなに長いとは思ってもみなかった。ほんの数年のことのような気分でいたからだ。人生は一瞬

という言葉が思い浮かび、戦慄が走った。成長を続けたセンターと、成長しない自分との落差。まあ、言っても仕方がない。

 さらなる成長を遂げる広島大学高等教育開発センターを見つめ続けつつ、また、どこかで貢献できる機会をいただければ幸甚の限りである。