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東北大学 高度教養教育・学生支援機構 教授
大森 不二雄
広島大学高等教育研究開発センター創立50周年へのお祝いメッセージ
大森 不二雄 (東北大学 高度教養教育・学生支援機構 教授)
創立50周年、誠におめでとうございます。
貴センターが設立された1972年以来、今日までの50年間に、世界と日本の社会・経済は大きな変貌を遂げるとともに、高等教育もまた
マス化・ユニバーサル化やグローバル化・市場化など数々の変革を経てきました。その間、貴センターは、日本の高等教育研究における
中心的拠点として、大学教授職、大学職員、教育研究組織、ガバナンス、学位課程と学修成果など、高等教育の諸側面に関する総合的な研究を
推進するとともに、研究成果を活かしてFD・SDやIRなどの現代的課題への貢献にも役割を果たしてこられました。
貴センターには、今後とも引き続き、「研究」センターとしての不易の存在価値と共に時代の変化に柔軟に対応できるレジリエンスの発揮が
求められるものと思います。しかし、期待されるのはそれだけではありません。
日本国内に目を向ければ、近年の大学は、教育・研究における変化への対応の遅れやガバナンスの在り方について、政府や経済界から批判を
受け、追い立てられている感すらあります。幾多の成長戦略にもかかわらず低成長経済を脱することができず、急増する社会保障費と累積する
財政赤字になすすべのない中、官庁や企業の不祥事が相次ぐなど、危機的状況にある日本社会において、外圧としての大学改革に受身で対応
するだけでよいのでしょうか。また、世界に視野を広げれば、紛争・戦乱や抑圧体制への対峙において、自由や多様性など21世紀の人類が到達
した普遍的価値への信頼に揺らぎが見られ、社会の二極化も指摘される中で、大学の立ち位置や学問の自由の在り方も問われる状況が生まれて
います。
今日の大学には、以上のような内外の変化に対応するだけでなく、影響力を発揮するエージェンシー(行為主体性)が求められ、貴センター
には、日本と世界のための大学研究拠点としての新たな構想が期待されると考えます。
過去50年ではなく、長期の人類史的視点に立てば、大学の機能は、中世欧州の専門職養成ギルド、英・米の社会的・政治的エリート集団の
ためのリベラル教育、ドイツのフンボルトモデルにおける「研究」理念、これを輸入した米国による大学院の発明など、中核的ミッションすら
変えながら、今日まで発展してきていることが分かります。これまでの高等教育の歩みを踏まえつつ、その未来を展望する研究・教育活動に
おいて、貴センターが日本と世界をリードされることを期待いたします。