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香川大学 教授
小方 直幸
続くセンターとの対話
小方 直幸 (香川大学 教授)
センターが50歳を迎えるという。私とほぼ同じ年齢を重ねてきたことになる。人も組織も50余年を生きれば様々なことがある。調子のいい
ときもあれば、不調のときもあるし、従来の方針を貫くことを求められることもあれば、方向転換を余儀なくされることもある。さすがに
私自身に面と向かっては言いづらいし、人生100年時代といわれればまだ半ばということになるが、半世紀の人生を全うしてきた人がいれば、
率直に祝福したい気持ちになる。50歳を迎えるセンターに対しても同様の想いである。現在センターを支えてくださっている教職員そして学生
の皆さんの努力はいうまでもないが、これまでセンターを支援してくださった様々な方々のおかげで50年という歩みがある。OBの一員として、
直接そして間接的にセンターと関わっていただいている方々に、改めて感謝申し上げたい。
私の大学教員としてのキャリアのスタートは高等教育研究開発センターであった。私が過ごしたのは法人化前後の期間で、他の国立大学も
そうだったかもしれないが、この時期はまだ比較的恵まれた環境にあったと思う。それでもCOEを申請し採択されるなど、組織として研究に
対しては攻めの姿勢を貫いていたし、教育についても、次世代の高等教育研究者の育成を目指し、質の高い論文執筆の指導に注力していた。
そうした環境下で在籍した10年間は、高等教育の教育・研究に対する姿勢を学んだ時期で、私のキャリア観の基盤は、センターに育てて
もらったといってよい。
続くキャリアは、東京大学の大学経営政策コースであった。自身の研究も大学経営や政策へと拡充・シフトする必要があり大きな挑戦でも
あった。試行錯誤の連続だったが、センターには歴代の先輩方が政策研究等を行ってきた伝統もあり、それを参照しながらのやり繰りだった。
教育は純粋な研究者養成というよりは、次世代の大学経営者の養成の指導に力を入れる必要があった。研究も教育も、実践という視点を特に
学んだ9年間だったが、センターでの経験を下敷きに、自身に何を新たに付加できるかを模索した時期である。センターは離れたものの、自身の
在り方としてセンターとの対話は深まったといってよい。
そして現在は香川大学で、次世代の教職者の養成に携わって3年目を迎えようとしている。広島から東京への異動は新たな挑戦だったが、高等
教育という点では継続性があった。だが教員養成というのは、人生で経験したことのない全く未知の領域である。近年イノベーションへの期待
を背景に、高等教育政策に加え学習指導要領にもその思惑の浸透が垣間見える。イノベーションに対しては推進派も批判派も過剰反応している
ようにみえるが、私がセンターから受け取ったメッセ-ジはシンプルである。
「現状に胡座をかいてはいけない、そして常に新たなことに挑戦せよ」。
このメッセージは、センターに対する私の変わらぬ期待でもある。こうして今でも、私とセンターとの対話は続いている。