お祝いコメント/秦 由美子

同志社女子大学・表象文化学部・教授
秦 由美子

 

お祝いのメッセージ

 秦 由美子(同志社女子大学・表象文化学部・教授)

 

 大阪大学の教育実践センターに勤務する際に、教授で来ますか、と尋ねられた時にはまだ博士号を持っていなかったため、その申し出を断り、

助(准)教授でお願いします、と言ったのが、そもそも大きな受難の始まりだった。長く苦しい博士号取得への道程が始まったのだ。

正直者(馬鹿がつく)にも限度がある。

 しかしその後、有本章元センター長、山本眞一元センター長のお陰にて、広島大学高等教育研究開発センターに異動することで、思う存分研究

する時間が与えられたのである。この時間が無ければ、今の私は無く、研究者としての存在も無かった。

また、本センターにて数多くの秀逸な研究者の方々にお目にかかれたことも、大きな遺産である。それらの方々には、足を向けて眠れない。


サセックス大学での発表

 わたくしの研究は、海外、特にイングランドとウェールズの高等教育関係者との

対話から始まる。2001年には、約30の大学の学長等とインタビューを行い、その

後も毎年、大学以外に公的機関、評価機構、認証機関、民間の教育機関、オックス

フォード研究センター、リーダーシップ財団、多種多様な高等教育関係機関を訪問

し、多くの事を現地で学んできた。

 足で回る調査であり、なんと非効率な研究なのだと、笑われそうであるが、1985

年の大きなショルダーフォンから、1900年代後半には漸く小型化された携帯電話が

広がりといった遥かに現代とは異なる環境の中で、パソコン片手にイングランド

を駆け回っていた。パソコンも機能が低く、翻訳機能も低能で、そのため辞書と

首っ引きでのインタビューの原稿を起こしたものである。外注するといった事は

考えることも無かった。しかしながら、学長らの言葉の持つ重みは計り知れず

(『変わりゆくイギリスの大学』 2001)、現代においても、あるいは現代で

あるからこそ、彼らが語る内容に意味が在るように考えるのである。大学の原点

に立ち戻る、あるいは、研究の意義を問い直すために必要な内容であると確信


クライストチャーチ・カレッジ オックスフォード大学

している。そして、こういったわたくしの自由な発想を認めて頂けた場所、現在の私の立ち位置を確立できた場所、かつまた担保してくれた

広島大学高等教育研究開発センターに感謝している。

 改めて、本センターの50周年を、心より御祝い申し上げるとともに、益々の伸展を祈念する次第である。