櫻井勇介准教授と大学院生の程文娟さんの共著論文が『Innovations in Education and Teaching International』掲載されましたのでご紹介いたします。
書誌情報
Title: How researchers across career stages experience researcher independence: A visual collaborative autoethnography
Authors: Yusuke Sakurai, Jin Yu, Dangeni, Anding Shi, Wenjuan Cheng, and Kelsey Inouye
Journal: Innovations in Education and Teaching International
URL: https://doi.org/10.1080/14703297.2026.2666368
本研究の概要
研究者としての自立の開発は、ゴールではなく「でこぼこした旅」です。そこには試行錯誤や主体的な選択、周囲からの励まし、そして不安定なアカデミック雇用の現実が複雑に絡み合っています。
本研究では、キャリア段階の異なる6名の教育学研究者(櫻井勇介:広島大学, Jin Yu: The University of Glasgow, Dangeni: Anglia Ruskin University, Anding Shi: The University of Oxford, 程文娟:大阪大学(本学博士課程後期), Kelsey Inouye: The University of Oxford)が、研究者としてのこれまでの自らの歩みを振り返りました。私たちは「経験の川(river of experience)」と呼ばれるビジュアル手法を用い、それぞれが研究者としての自身の道のりを「川」として描きました。川の曲がりや分岐点が、自立性に影響を与えた出来事を表します。その絵を手がかりに、グループでの対話を経て共同分析を行いました。
分析の結果、三つの重要なメッセージが見えてきました。第一に、研究者の自立性は固定された状態ではなく、「でこぼこした」プロセスだということです。私たちは皆、研究へのフィードバック対応、学会発表、論文出版、新たな職務への適応などを通じて、自信と不安、依存と自律の間を行き来していることを語りました。第二に、自立性は主体的なプロセスでもあります。平たく言えば、自立は「いつか自然に身につく」ものではなく、自ら選び、試し、機会をつかみ、判断力を鍛えることで築いていくものだということです。第三に、自立性は「承認」によって支えられています。この承認は、自己理解や自己肯定感といった内面的なものに加え、指導教員や仲間からの評価、論文の採択、研究費獲得、ポジションの獲得といった外的な要素からももたらされます。
本研究から見えてきた重要な点は、「自立」とは孤立を意味しないということです。むしろ、多くの場合、研究者は他者との関係の中で挑戦され、支えられ、認められることで、より自立的になっていきます。もう一つ本研究の大きな貢献があります。本研究は、自立性が博士課程を過ぎても継続的に形成され、アイデアや能力だけでなく、不安定な雇用、博士取得後の研究者に与えられる役割や機会といった構造的要因によっても形づくられることを示しています。

