櫻井勇介准教授の共著論文が『Journal for New Generation Sciences』掲載されました

櫻井勇介准教授の共著論文が『Journal for New Generation Sciences』に掲載されましたのでご紹介します。

■ 書誌情報
• タイトル:「Conceptualising Intellectual Humility in Advanced Research Contexts: Insights for Postgraduate Supervision」
• 執筆者:Ruth M. Albertyn, D. L. Elliot, and Y. Sakurai
• 掲載誌名:『Journal for New Generation Sciences』
・URL:https://journals.co.za/doi/epdf/10.47588/jngs.2025.23.02.a7

■論文概要
本論文は、大学院レベルの研究指導を対象に「知的謙虚さ」を概念的に整理したコンセプト・ペーパーです。博士課程教育や研究者育成に関心をもつ指導教員・実務家・研究者を主な読者として想定しています。本論文の著者チームは、高等教育研究や博士課程支援、研究指導の実践といった領域で実績をもつ研究者たちで構成されています。

大学院の研究は、本来は新しい知を切りひらく「創造的な旅」ですが、その裏側では「不確実さ」「権力の不均衡」「ネガティブな指導経験」が積み重なり、学生を追い詰めてしまうことがあると言われています。この論文は、そのような負の経験が学位取得のプロセスと成果を大きく損なうことを指摘し、「知的謙虚さ」という徳(virtue)に注目して、明示的に新しい指導関係の枠組みを提案しています。本論文では、従来の「成果」や「情報量」中心の指導では見落とされがちな、人間関係や感情面を含む“研究のプロセス”をどう支えるかが、核心的な問いになっています。

本画像は Perplexity AI により生成されたものです

著者はまず、「ドクター・インテリジェンス」という枠組みから、研究者として必要な4つのマインドセット、「Knowing(専門知識)」「Doing(やり遂げる行動)」「Thinking(高次の思考)」「Willing(開かれた学び続ける姿勢)」を整理しています。これまでの大学院教育は、主にKnowingとDoingばかりを重視し、「Thinking」と「Willing」は、指導教員との会話や研究室文化といった「隠れたカリキュラム」の中に埋もれ、非明示的であったと指摘します。そこで論文は、知的謙虚さを「自分の強みと限界を現実的に見つめ、不確実さを抱えたまま他者の視点にも耳を傾ける姿勢」として捉え直し、この「思考」と「意志」の側面に光を当てようとしています。

本画像は Perplexity AI により生成されたものです

さらに本論文は、哲学・心理学などの先行研究を踏まえつつ、知的謙虚さを「傲慢(自分を過大評価すること)」と「卑屈さ・従属(自分を過小評価しすぎること)」の間のバランスとして位置づけます。本論文で、知的謙虚さを指導場面でどう育てるかとして、「不確実さを“当たり前”として扱うこと」「ソクラテス式の問いかけで、学生に考えを言語化させること」「指導教員自身が、限界や迷いを言葉にしながら模範を示す“オープンな思考モデリング”を行うこと」「共同学習の場をつくり、対話を通じて互いの思考を試せる安全な空間を用意すること」など、具体的な実践ガイドラインが提示されています。こうした工夫を通じて、学生と指導教員が「一緒に迷い、一緒に考え、一緒に成長する」関係へとシフトすることが、知的謙虚さにもとづく大学院教育のゴールだと本論文は強調します。