櫻井勇介准教授と大学院生の猿田静木さんの執筆論文が『Research in Comparative and International Education』に掲載されましたのでご紹介します。
論文タイトル:International academics’ institutional integration and social adaptation among different local language competence groups in Japan
執筆者:櫻井勇介、猿田静木 、メイソン・シャネン
DOI link: https://doi.org/10.1177/17454999251379390
URL: https://journals.sagepub.com/doi/10.1177/17454999251379390
プレプリント: https://osf.io/qshga_v1
オンライン出版: 2025年9月24日
本論文の要点:
在日外国人若手研究者:言語能力、組織内統合、社会適応、そして意外な結果
・主な研究結果
本研究は、日本における外国人研究者の経験に関する従来の理解に疑問を投げかけるものです。一般的な見込みとは異なり、外国人若手研究者の所属組織内統合や学術界外での社会適応の程度を、彼らの日本語能力レベルが一貫して説明するものではないことが明らかになりました。
・研究の概要
この研究では、日本の様々な大学や研究機関に所属する305名の外国人若手研究者を対象に調査を実施し、初級者から母語話者レベルまでの異なる日本語習熟度における彼らの経験を検証しました。結果は予想外のものでした。
所属組織内統合: 日本語習熟度と、同僚関係、所属意識、勤続意向を含む職場統合の指標との間に、一貫した関係は見られませんでした。つまり、様々な日本語習熟度を持つ研究者が、同等の所属組織内統合レベルを示していました。
社会適応: 日本語習熟度と学術界外での社会適応、特に対人関係における相互作用との間に若干の関連は見られましたが、その程度は非常に小さいものでした。日本語習熟度が日常生活適応に与える実用的な影響は、限定的であるという結果になりました。
・複雑な現実
この研究は、日本における外国人研究者の経験の多面的な性質を示唆しています。言語の壁が主要な障害となるのではなく、成功を決定する上でより重要な役割を果たす他の要因があることを示唆しています。
例えば、職場文化や同僚関係が言語スキルよりも影響力を持つ可能性があります。いわゆる、「よそ者のパラドックス (stranger paradox)」―物理的には近くに存在するが心理的には距離がある状態―は、日本語能力に関係なく研究者に強く影響を与えているかもしれません。また、所属組織のサポートシステムや組織的な取り組みが、個人の言語能力よりも重要かもしれません。ただ、どんな要素が日本の外国人研究者の組織内統合や社会適応の程度を最も説明するのかはまだ分かっていません。
・高等教育政策への示唆
これらの知見は、国際化を目指す日本の大学にとって重要な意味を持ちます。2010年代にスーパーグローバル大学創生支援事業などの取り組みによって推進され、外国人研究者は45%増加しましたが、効果的な研究共同体を創出していくためには、単に語学研修を提供するだけでなく、より繊細な戦略が必要です。
この研究では、高等教育機関は日本語習得の機会の提供に際して、その運用力を専ら重点とするのではなく、同僚関係の強化、包括的なサポートシステム活用の向上に焦点を当てるべきであると提案しています。語学研修は、生活の質や特定の管理業務において価値があるかもしれませんが、組織内統合の課題に対する唯一の解決策として見なされるべきではないようです。
・より広い文脈
この研究は、ますますグローバル化する高等教育環境における学術的モビリティの理解に貢献しています。世界中の大学が国際的な人材を求めて競争する中で、日本の経験は、外国人研究者が新しい環境で成功するかどうかはもちろんのこと、ローカルな研究者や構成員がともに望ましい研究共同体を構築してゆけるかを決定する複雑な要因について、一つの貴重な洞察を提供することができました。



