採択課題の研究成果に関わる刊行物を寄贈いただきました

令和元年度の採択課題の研究成果に関わる刊行物を寄贈いただきました。

戸田千速(2020)「福北大都市圏のビジネススクールに関する比較研究」『日本與亞太研究』
【概要】
 昨今、福岡・北九州都市圏のビジネススクール市場が活況を呈している。本研究は同都市圏に立地する九州大学大学院経済学府産業マネジメント専攻(QBS)/北九州大学大学院マネジメント研究科マネジメント専攻(K2BS)/グロービス経営大学院大学経営研究科経営専攻・福岡校の運営体制及びカリキュラムに焦点をあて、比較研究を行ったものである。
 国立の総合型研究大学に開設されたQBSは、工学研究院/芸術工学研究院/ロバート・ファン・アントレプレナーシップ・センターなど学内各部局との連携を通じ、技術経営(MOT)に力点を置いた教育を展開している。日本では稀有なコンテンツビジネスプロデューサー育成プログラム(Ciao-P)も、部局間連携の賜物である。研究者教員と実務家教員を同一基準で評価する点にも、QBSの独自性が垣間見える。
 公立大学に開設されたK2BSは、北九州地域が内在する課題の自発的な解決を目指している。それ故、公共経営・まちづくり・ソーシャルビジネス分野を重視し、「新しい公共」の担い手たる非営利セクター(NPO等)で活躍できる人材の育成も視野に入れている。またQBSと同じく、アジアに焦点をあてた科目を開講し、アジア各国のビジネススクールとの連携を強化している。
 私立大学転換以前は株式会社立大学であったグロービス経営大学院は、とりわけ教員の人事評価制度について私企業を彷彿させる手法を採用している。具体的には目標管理制度(MBO)を採り入れ、受講者による教員満足度評価において基準点に達しない教員に対して改善施策を講じている。即ちグロービス経営大学院は、受講者を伝統的な大学院生というより寧ろ顧客として捉えている。カリキュラムに目を転じれば、テクノベート(テクノロジー×イノベーション)はじめ、新機軸の創出に注力している。
 本研究を通じて、設置形態の差異が運営体制及びカリキュラムにもたらす影響は大きいことが明らかとなった。加えて伝統的なMBAプログラムのカリキュラムに囚われず、各校が独自色を強めている点も確認された。

※該当の学会誌をご寄贈いただきました。ありがとうございました。

令和元度採択課題
D01002:戸田 千速 (東京大学大学院教育学研究科・博士課程 )『アジアのビジネススクールに関する研究』