国際会議『知識社会における大学教授職(APIKS)』 開催報告

記事概要:国際会議『知識社会における大学教授職(APIKS)』 開催報告

開催日時:2019年3月4-5日

報告者:黄 福涛教授

 この研究プロジェクトは2007/2008年に実施した「大学教授職の変容に関する調査研究(CAP: Changing Academic Profession)」の追跡調査としてスタートしたもので、特に自然科学のSTEM分野(科学、テクノロジー、工学、数学)に焦点をあてた大学教授職の国際比較を目的としています。世界30カ国以上の研究チームがこのプロジェクトに参加しており、調査手法などに関する4回のワークショップを経て(2014:フィンランド、2015:ブラジル、2016:韓国、2017:日本)、これまで21カ国で共通の質問票を用いた調査が実施されています。

 今回の会議は3つの基調講演および各国研究チームによる調査結果の報告を中心に構成され、欧州、北米、南米、アジアの20ヵ国・地域から約60名(うち外国から50名)の研究者が出席しました。基調講演では、兵庫大学の有本章教授(演題「大学教授職のR(研究)-T(教育)-S(学習)」[An International and Comparative Perspective of the Academic Profession’s R-T-S nexus])、ドイツ・カッセル大学のタイヒラー教授(演題「知識基盤社会:研究と教育の有機的連携を損なう力になるか?」[The Knowledge Society: A force undermining fruitful links between research and teaching?])、そして米国ジョージワシントン大学のカミングス名誉教授(演題「知識アカデミーのための知識:若干の小理論[Knowledge for the Knowledge Academy: Several mini-theories]」が登壇し、同分野の過去の研究実績に基づく視座や国際調査における課題を提示しました。また、20ヶ国・地域の研究チームによる調査結果の報告では、大学教授職の“教育”と“研究”に対する意識や2つの職務の関係性について、専門分野、職位、年齢など多様な側面からの分析に基づいた各国の特性が報告されました。各研究チームの発表後には、分析手法の妥当性や各国独自の社会的・政治的背景に沿った大学教授職の役割や教育・研究活動の関係性などについて質問が相次ぎ、活発な議論が展開されました。最後に、今回の研究成果に基づく学術出版、国際的データベースの構築、国際共同研究の連携などプロジェクトの今後の発展の方向性について意見が交わされ、会議は2日間の日程を終了しました。