センターの特徴

■ 広島大学の学内共同利用センター

当センターは、広島大学における教育、研究、管理運営に関する調査研究をはじめ公開研究会、セミナーの開催、教育、教職員の研修、種々の出版活動などを通じて全学共同センターの機能を果たしています。各学部に委嘱している併任研究員の協力を得て、学内の諸問題を研究する体制をしき、各種プロジェクトや研究会によって成果を上げています。近年では学内共同研究として「広島大学の学部教育に関する基礎的研究」を継続してきました。また、学内の部局等が自主的に実施している組織運営の改革、教授科目・教科内容・教授法の改善並びに自己点検・評価活動に対して情報提供サービスと支援を行っています。

教育の面では、大学院教育のほかに学士課程教育にも協力し、「大学論」(総合科目)を開講しています。さらに1999年からは大学院社会学研究科の中に大学教員志望者を対象とした「共同演習」を開講し、大学教員と同様に大学院生向けのFD活動を実施しています。

この外にスタッフは、学内の各種の専門委員会に参加し専門的知見を提供しています。近年では、将来構想検討委員会、教育研究整備基本計画検討特別委員会、大学院設置検討委員会、大学計画委員会、教養的教育検討委員会、評価委員会、など全学の重要な委員会に参画しています。さらに、2016年度からは、センター教員から副学長が輩出されました。今後大学改革が一層推進されるにつれて、具体的な大学の実践的役割の一端を担うことが期待されます。

また、「広島大学大学情報サービス室」や「アドミッション・センター」とも深い連携関係にありました。前者のサービス室は2000年度から発足したもので、その前身は1996年度に設立された広島大学調査室です。4名のセンター教員(講師1名・助手3名)が、当センターの大学改革調査部と連携して本学の大学改革や情報調査等に貢献してきました(現在は別組織に発展解消)。一方、後者のアドミッション・センターは2000年度に概算要求で認可された学内措置のセンターであり、高教研センターのアドミッション研究部(当時)所属の3名の教官が活動してきました。これらの教官所属形態は、AO入試を大学研究の専門家・各部局の教官代表及び事務官を主体とする本学独自のスタイルで協力的に推進する目的がありました。「アドミッション・センター」は、現在「入学センター」へと改称され、高教研センターとの連携を継続中です。

■ 全国の高等教育研究者に開かれた共同利用センター

当センターは、わが国で唯一の高等教育研究機関として誕生した経緯から、全国の高等教育研究者の共同利用センターとしての役割を果たしています。それを支えるのが客員研究員制度です。全国の各大学や研究機関、企業や団体の優れた研究者を客員研究員として委嘱することで、先駆的な研究を積み重ねると同時に、高等教育研究の裾野を拡げてきました。

毎年開催する研究員集会は、日本高等教育学会の設立以前には、実質的に学会として機能してきました。また、国内外の研究者を招いての公開研究会や、大学論集、高等教育研究叢書の出版を通じて、高等教育研究を先導しつつ、全国の高等教育研究者の活動も支援しています。(さらに、専任スタッフや研究員が高等教育に関わる各種審議会や委員会に参画することで、高等教育政策や大学改革にも積極的に貢献しています。)

今後は、従来の個人ベースのネットワークに加え、国内外の高等教育研究機関との連携をいっそう深め、より充実したサービスを提供していく予定です。

■ 国際的に開かれた高等教育研究センター

センターは、日本を代表する高等教育研究機関として国際的な部門の活動を個人レベルや機関レベルにおいて続けています。国際会議や国際セミナーを主催するほか、UNESCOやOECD等の国際機関の要請を受けて多くの共同研究に参画し、また、海外の財団や大学との共同研究も実施しています。

これまでに、オランダのトゥエンテ大学主宰・ドイツのベルテルスマン財団後援のOECD12カ国共同研究、米国のカーネギー教育振興財団主宰の14カ国共同研究、ペンシルバニア大学主宰の6カ国共同研究などに参画しています。また、2001年にはUNESCOの高等教育に関する国際会議を主催しました。欧米にかぎらず、アジア・太平洋地域での共同研究の可能性の模索を進めているところです。

短期や長期の外国人研究員や大学院生を受け入れること、欧文出版物の刊行によって日本の高等教育研究の成果を海外へ紹介することも、それぞれ重要な活動となっています。

■ 高等教育関係の専門職従事者・研究者の養成・研修を目的とした大学院博士課程の設置と学位の授与

高等教育研究開発センターは、高等教育の専門職従事者と研究者の養成をめざして、1986年に大学・高等教育の分野では日本で最初の大学院博士課程(前期・後期)を設置しました。当初は、社会科学研究科の中の国際社会論専攻「比較高等教育コース」として開設されました。2000年度からは、大学院教育学研究科に参画し、協力講座として「高等教育開発専攻」を新たに発足させました(2016年「高等教育学専攻」と名称を変更)。2020年4月からは、大学院の改組再編に伴い、大学院人間社会学研究科へ移行しました。これらの専攻・分野では、当センターの専任教官が授業科目と論文指導を担当しています。

所定のコースワークと論文指導によって大学・高等教育の領域における研究者、専門家、高度職業人の養成をねらいとし、外国からの研究生や社会人にも広く門戸を開いています。課程修了者には修士(教育学)、博士(教育学)の学位が授与されます。社会科学研究科に所属していた時期を含めて、現在(2023年3月)までに90名が修士号を、23名が博士号を取得しています。

全国的に大学改革が進行している現在、従来から行ってきた研究者養成に加えて、大学運営の企画・実践・評価に携わる高度な実務家の養成が急務となっています。こうした課題に対処するため、大学院プログラムのさらなる開発を行っています。

■ 大学・高等教育の全国的情報センター

大学・高等教育関係文献・資料類の収集と整備は、発足以来の最も重要な課題として多大の予算を注入してきました。その結果、現時点では日本で最も整備された高等教育に関する図書・資料を備えることとなり、高等教育関連の諸領域の和文出版物,英仏独中国語等の書籍、主要雑誌類、全国の諸高等教育機関の報告書・沿革史・要覧・パンフレット、外国主要大学の大学改革関連文書カタログ・履修ガイドのほか、過去20年以上にわたる主要新聞の高等教育記事項目別ファイルなどが保管されています。

これらのコレクションは学内のみならず、学外にも公開し、一般の利用にも供しています。なお文献検索はインターネットから直接アクセスできます。現在、これら文献情報の収集と対外サービス以外に、内外の高等教育に関する統計、データ類を収集・提供するために新しい情報化時代に対応した高等教育情報データバンクの設立を進めています。

■ 高等教育研究成果の刊行センター

当センターは、専任研究員・学内研究員・客員研究員・外国人客員研究員等における研究活動の成果を様々な形で出版してきました。高等教育研究の成果を発表する機関誌として「大学論集」は毎年刊行し、「大学研究ノート」シリーズを受け継いだ「高等教育研究叢書」と共に日本の高等教育研究発表の主要フォーラムとなっています。この外に国際会議報告書、インターナショナル・パブリケーション・シリーズ、高等教育統計データ集、コリーグ、COE研究シリーズ、Higher Education Forum、International Seminar Reports などが刊行されています。《一覧はこちら

これらの出版物は、国内では約600の主要大学図書館・研究機関・行政機関・マスコミ・高等教育研究者などに、また外国では約130の主要研究機関・高等教育研究者に、毎年発送しており、学術交流の重要なメディアとなっています。

■ 学際的研究者の人材ネットワーク

当センターは、高等教育研究の分野における人材ネットワークの中心として、内外の多数の方々の協力・支援を得ていますが、これらの多彩な人材は高等教育研究のための貴重なヒューマン・バンクであると自他共に認められています。

当センターが実施する学術研究に諸領域の専門家の参加を求めるほかに、毎年開催される研究員集会では約100の新旧研究員やオブザーバーの参加を得て、高等教育の中心的課題について発表と討議が行われます。それとともに、国内外から招聘された専門家による国際会議や公開講演会・研究会も随時行われ、国内外の研究者の協力を得て各種研究プロジェクトが行われています。

これら人材の特徴は、学内、学外、国内、国外を問わず、専門の学部、学科のカベをこえて、大学・高等教育の研究に関心をもつ人々を広く結集していることにあります。これら当センターの活動に援助・協力を惜しまれない内外の人材こそ、当センターの最大の財産であり、組織的活力の源泉になっています。

■ 全国大学教育研究センター等協議会の設立と展開

標記の協議会は、平成8年(1996年)4月に国立11大学を加盟機関とし、当センターを事務局として設立され、活動を続けてきました。今日(2023年8月現在)では加盟機関は36機関を数えるに至りました。

この間、主たる事業として共同プロジェクト「大学設置基準の大綱化に伴う学士課程カリキュラムの変容と効果に関する総合的研究」(平成10年度~12年度文部省科学研究費助成基盤研究B)に取組みました。それは、全国の学士課程のカリキュラムや教育が一種のアノミーに陥っている事実をアンケート調査やヒアリング調査等によって実証的に解明し、それを踏まえて、学士課程教育の再建の必要性を提唱しています。協議会は、こうした研究ネットワークを今後ともさらに充実させ、国立大学をはじめ全国の諸大学が直面している様々な問題や課題を解明し、大学改革と再建に貢献することが期待されています。

■ 新たな挑戦:「公募型研究」の実施へ

当センターでは、急激な環境変化に伴う高等教育の諸問題に取り組むための共同研究の場を国内外の研究者に提供し充実させることが責務であると考え、2016年度から、国内外の関連する研究機関と連携し、「公募型共同研究」を実施しています。

本共同研究は、広く国立大学法人、公・私立大学及び国・公立研究機関の教員・研究者又はこれに準ずる方を対象としており、高等教育研究のさらなる発展および実践や大学改革への貢献が期待されています。